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2026.1.1

〈BISOWN〉
Limited Model《Fat XX Denim》

中出「伊藤くんお久しぶりですね。しばらくブログ更新されてなかったですけど、お忙しかったですか?」

伊藤「実はいつもブログを書いてもらっているライターの守屋さんが出産されて、お仕事を休業されてたのでお願いできなかったんですよ。その間自分でブログを書こうかなとも思ったんですけどやっぱりどうしても書けなくて。というのと、これは言い訳じゃないですけど、そもそもブログの必要性ってどれくらいあるんだろうっていうことも考えて。大体がインスタで完結する時代だし、僕もインスタだけでいいかもと思ってインスタで書くことも試したりして。でもあんまりみんなが安易にアクセスできる場所に情報を載せとくのもなって思ったり。そうやって色々逡巡してたら間があいてしまって、また守屋さんにお願いできるタイミングできちんとブログに文章を残そうと思っての、今日ですね」

中出「タイミングよく、〈BISOWN〉を取り上げてもらえて嬉しいです」

伊藤「今回また〈BISOWN〉に別注のデニムをお願いしたわけなんですけど、これを本当は2025年の最後の発売アイテムにしたかったんですよね」

中出「なかなか凝ったアイテムだったので時間がかかってしまいましたね。今回は今まで〈BISOWN〉ではやったことのない加工をたくさん施したデニムになりました。洗いやマシンでの加工など幾つもの工程を経て、最後は職人さんが1つ1つ手作業で加工してるんですよ」

伊藤「それは時間がかかって当たり前ですよね。僕が無理言って年内にとお願いして、それは流石に無理だったんですけど、こうして2026年の最初の発売アイテムとしてお披露目することが叶いました。ありがとうございました。ということでこのデニム、僕が私物で持っていた60年代前半のダブルエックスをもとに作ってもらったものです」

 

思いもよらないものと出会いたい

伊藤「まずなぜこのダブルエックスをリファレンスにして中出さんにデニムを作ってもらいたかったかというと、〈BISOWN〉の美しいシルエットとかものづくりの姿勢と真逆の試みをしてみたかったんですよね。中出さんが作る男臭いデニムを見たかったんです。あえて、ブランドの強みとも言える部分から遠いものを作ってもらいたいなと」

中出「前からこのダブルエックスの話を聞いていて、リファレンスにして作るにしても、私はリプロ屋さんではないからやっぱり〈BISOWN〉がやるならっていう、ブランドのアイデンティティみたいなものは忍ばせたつもりではあります。でもこれまで伊藤くんと作った《USN Denim》とか《Extra Wide Denim》とは全く違うベクトルのものづくりになりました。でもなんでこういう気分になったんですか?」

伊藤「いつもながら今回もすごく個人的な話ですけど、この1年間めちゃくちゃ服買ったんですよ。今まで以上に色々買い物をしたと思っています。そしてそのどれも、事前に情報を入れてから買わない、ということをしていました。今って、さっき話に上がったインスタもそうですけど、どんなものが流行ってるとか、何のアイテムがどこで売ってるとかを検索したらいくらでも容易に探せてしまうし、実物を見なくても、どんな作りになってるとかどんな生地を使ってるということをテキストで読めるし、あるいは写真だっていくらでも見れてしまいますよね。だから気づいた時には『これを買いに行こう』と思って下調べを済ませた上で、それが確実に手に入るお店に行って買う、という買い物体験になっていると思うんです。最近の僕がそうでした。でもそれって実は、買い物のワクワクとか、思いもよらなかったものとの出会いとか、あるいは失敗とかを遠ざけてしまっているなと。買い物の素人みたいなこと言ってますけど、でもあえて、ふらっと立ち寄ったお店で思いがけないものを見つけて試着して、直感で『いいかも』と思ったものを先入観なしに買ってみるってことをやってみてたんです。そこから、凝り固まった価値観から離れた洋服を着たいって気持ちになって」

中出「ちなみに最近買った、思いもよらなかったものってありますか?」

伊藤「うーん。意外と出てこないっす(笑)でも、たとえば僕は〈CASEY CASEY〉のパンツのシルエットって苦手意識があって履いてないんですよ。でもごく最近たまたま見かけた〈CASEY CASEY〉のパンツを、買うつもりもなく履いてみたらすごく新鮮で。思いがけず購入したらそれが案外自分にフィットして、追加でもう一本買ったりしました。そういう自分の手札になかったものがぽんっと出てきた時に、いつもの自分の選んでいる洋服とコーディネートした時に生じる化学反応がすごい楽しかったんです。そういうファッション本来の楽しみ方、みたいなものを2025年は楽しみたいなと思って買い物をしてました」

中出「男の人って意外とそういう買い物をしないような気がして。買うものに理由が欲しいと思う人が多いんじゃないですかね?とりわけ最近は物価高もあって、洋服にかけられるお金も限られてくるだろうし、そんな中で目の前の洋服を買う意味を、多くの人は求めてしまうんじゃないかと思います」

伊藤「理由づけして買い物することから離れてみるとすごくフラットに洋服を見れるようになって、視野が広がった気がするんですよね。目の前にある洋服に、『いいな』と思ってる自分の直感があるのだから、それを信用していいんじゃないかなと。そこに、デニムだから岡山じゃなきゃとか、シャツはイタリア製じゃないととか、それっぽい買い物の理由とか正当化する言い訳みたいなものっていらないよねって。そんなことを思っていたら、僕は〈BISOWN〉の綺麗なシルエットが好きとか、美しいものづくりに惚れてるとか、そう思っていたけど、きっとそうじゃないもっと直感の部分で好きなはずだと思って。自分の思っている〈BISOWN〉らしさじゃない方向性のデニムを作ってもらったら、逆にその本質的に好きである部分をきちんと自分の中に落とし込める気がしたんです」

 

きれいを目指さず作る〈BISOWN〉の新しいデニム

中出「今までの伊藤くんのオーダーはトラウザー感覚で履けるようなデニムっていうイメージでしたよね。すごくボリュームはあるんだけどヒップはすっきりしていて綺麗な落ち方のシルエット、色落ちは割と平坦なのっぺり感、強弱のない縦落ちとか。そういうデニムを男性が履くっていうのが面白いなと個人的には思っていたんです。メンズライクなトップスとの相性を考えたりすると新しいバランス感だなって」

伊藤「ワークウェアだけどワークっぽくならないというのがやっぱり〈BISOWN〉デニムの良さなんです。男っぽいアイテムにやっぱり男臭いデニムを合わせるとワークウェアですという印象になっちゃいますし。でもこの秋冬とかは特に、キャメル100%とかカシミヤ100%のセーターだったり、光沢のあるパデッドコートだったり、圧倒的に原料の良さのわかる生地のアイテムを意図的に仕入れていたんですよね。ラグジュアリーで高級感のあるアイテムを、男臭いデニムに合わせたいっていうイメージが買い付けの時からすでにあったんです。まさに今の僕のスタイリングみたいに。《USN Denim》のリファレンスにしていたビンテージのデニムがそもそも綺麗なシルエットだったし、《Extra Wide Denim》は寸法から生まれたデザインだけど、これらがどんなシルエットになるかがある程度想像できていたというか。最初から美しいデニムでその延長線上のものづくりって感じだったんです。だからその逆を行くなら、やっぱり〈米L社〉かなと。ワークウェアの原初のアイテムでもあるわけですしね」

中出「伊藤くんから見せてもらったダブルエックスは、ウエスト寸法が多分実寸で42インチくらいあったんですよね。だけど丈は伊藤くんサイズだからそのアンバランスさがすごい可愛い。股上も深くてすごい不思議ですよね、どんな人がどうやって履いていたんだろうって思います」

伊藤「これを買った時の一般的なデニムの履き方だと、数インチは大きいサイズを選んで履く、という感じだったと思うんですよね。それを少し腰を落として履くみたいな。だからおそらくゴールデンサイズが33とか34インチくらいだったと思うんです。でもこの42インチのデニムを試しに履いたらそのシルエットバランスが面白かったんです。501のダブルエックスをこのバランスで履く人は今いないだろうなって(笑)そのヘンテコなバランスのシルエットでも、各所のダメージは素晴らしくいい味わいで。かかと部分が擦れちゃって短くなってたり、叩いて破れを補強してあったり。僕自身が穴の空いたデニムが苦手で、ダメージデニム全般穴が空いているのが多いから、きちんと補強されてるのも個人的な好みにピッタリだったんです」

中出「これをベースに作ろうと思って最初に苦労したのがやっぱりパターンの部分ですね。そのまま履きやすいサイズに小さくしていくと、わたり幅など必然的に全体的に小さい寸法になっていきます。ビンテージで腰の抜けたデニムだったら、42インチのウエストサイズでもある程度収まりの良さや生地の馴れた感じがあると思うんですけど、いくら加工したとて新しいデニムはそうはいかないですよね。だから、このリファレンスのデニムを履いた時のわたりの感じとか全体のシルエットを維持しながらいかにウエスト周りを落ち着かせていくかっていうのはとても難儀したポイントでした。私も伊藤くんも信頼しているパタンナーさんがいるのですが、その方と何度も検証してようやく辿り着いた形です」

伊藤「現代の洋服でこんなへんてこな もの絶対作れないですもんね。でも僕はもっと不細工な形になるかなと思ってたんですよ。でも完成したデニムを見て、もちろん男臭さはあるんだけどその中にやっぱり〈BISOWN〉の美しさみたいなものが垣間見えるシルエットだなっていうのをファーストインプレッションで感じました」

中出「元のダブルエックスはヒップもかなり大きく落ちる感じがあるけれど、今回作ったデニムはウエストの大きさにつられてヒップがぼこっと出てしまうのを防ぎました。でもすっきりさせすぎちゃうと、ぼってり感のあるちょっと不細工な愛らしい感じがなくなってしまうので、わたり幅はキープしています。シルエット、すごくいいですよね」

伊藤「変なバランスで面白さがあるのに、履くとしっかりきれいなシルエットが出る、というのがやっぱり〈BISOWN〉の凄さだなと改めて思いましたね。ただ純粋にきれいというだけの切り口じゃないデニムだったからこそ、その良さを再確認できたように思います。でも、〈BISOWN〉はきれいなものづくり、だけじゃないというのが今回のデニムなんですよね」

 

手作業で仕上げるリペア加工で再現する
へんてこなデニムの個性

中出「冒頭でもチラッとお話しした通り、ダメージの再現やたたいた補修後など、加工は全てハンドで1点1点職人さんが仕上げています。元々ダブルエックスのジーンズを目指して作った生地を加工しているので、ビンテージさながらの色の出方や落ち方にもなっているはずです」

伊藤「裏側を見ると、元々の所有者がとりあえず手近にあったデニムで補強したんです、みたいなストーリーが見えるリペアの再現みたいになってて、そこにもぐっときましたね。きれいに丁寧に仕上げようみたいな狙いがないような雰囲気があると言えばいいんですかね。あと気になったところがあって、ウエストベルトの上のステッチってビンテージを模倣して作るとチェーンステッチじゃなくてシングルステッチになってたり、フロントボタン裏のところにVステッチが入ってたりするはずなんですけどそれがないんですよね」

中出「リプロを作りたいのだったら、〈BISOWN〉がやる意味ってないなと思って。ダブルエックスのリプロというより、とてもいい個体のデニムを私なりに解釈して強度面や、今の気分だったらこういうのがいいなという塩梅にしました。その辺りも、伊藤くんの話にこじつけるならば、理由はなくって、自分の感覚に従ってできたデザインですね」

伊藤「自分でダブルエックスを渡しておいてあれなんですけど、僕も全然リプロを求めているわけじゃないんですよ。でも完成したデニムはついついディティールを一つずつ確認したくなっちゃって。このステッチを見た時に、多分わざとだろうなと思って、僕が思ってたこと中出さんの間での感覚の一致があってすごい嬉しかったですね。裾が破れてる僕のダブルエックスのディティールは再現されてたり、この個体特有の個性はきちんと汲んで反映してくれてますよね」

中出「どうしてこうなっちゃったんだろうっていう裾の破れはそのまま再現しました。わざと汚れたような茶色の擦れもあったり、かなり細かいところまでやり切ってます。穴を補強しているところも、新品を破って穴を開けてそれをリペアする、ということと、本当に履き潰して破れちゃった穴をリペアする、だと方法が違うんです。緯糸だけが切れてたりするじゃないですか。そういう再現も、すごく難しかったところですね」


伊藤「先ほども話したように自分が履いているダブルエックスは42インチなんですけど、その不細工な感じのサイズ感をそのままお客さまにも体験してもらいたくて。でもさすがに42インチまで大きくなくていいよなと。それでもかなり大きいサイズ感の37インチを小さいサイズとして設定して、それより一つ大きいサイズは40インチで作ってもらいました。一般的には37インチのデニムなんてまずあまりないですよね。このサイズを、ベルトを絞って履いてもらうような想定です。レングスは、破れた裾の再現もあって一般的なものよりは短めです。なんだこれ、変だねっていう違和感を残してもらいました」

中出「股上もすごい深いので、腰で履くとその面白さが際立つかなと思います」

伊藤「そうなんですよ、めっちゃ股上深いですよね。だからハイウエストできゅっと履くことももちろんできるんですがこれは腰を落として履いて欲しいです。この股上の深さがデザインの一つかなって。そうやって履いてもらうと、かつて体験したことがない面白さを一番味わってもらえるはずです。まあそんなこと言いつつ、好きなように、直感で履いてもらえたらいいんですけど(笑)あとこれ女性の方が履くとめちゃくちゃ可愛いです。あとで中出さんにも履いてもらいます」



BISOWN

“Fat XX Denim” 37inch / 40inch

Used

¥61,600 intax

37inch→ウエスト,渡幅,裾幅,股下cm

40inch→ウエスト,渡幅,裾幅,股下cm

※1/3土営業後に実寸を記載いたします。

2026.1.3土14:00より店頭発売。

 

Online Storeでの販売はいたしません。

通信販売は、1/3土から1/5月の店頭販売終了後、残在庫を1/6火12:00よりHPのメールもしくはInstagramのdmにて承ります。こちらはご連絡いただいた順にご案内させていただきます。予めご了承くださいませ。