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2025.4.24

〈Le Yucca’s〉
Limited Model《Silp on》

足元の定番は、人それぞれ。〈New Balance〉の1500の人もいれば、〈CONVERSE〉のオールスターの人も、あるいは〈Paraboot〉のCHAMBORDの人もいる。いまの伊藤にとってのそれは、紛れもなく〈Noriyuki  Misawa〉。そして今後の自身の定番として履きたい靴を〈Le Yucca’s〉に依頼。そのシューズの誕生までのストーリー。

 

スタイリングの要の革靴

「Riverを始めるまで在籍していたセレクトショップで取り扱っていたのが〈Le Yucca’s〉。その頃から自分自身のスタイリングの基盤となっていた靴となっていて、30代のほとんどを〈Le Yucca’s〉と共にいた、と言っても過言ではないくらいの特別な存在だったと思います。在籍していた6年間は、そのお店のフィルターを通した〈Le Yucca’s〉のシューズをたくさんお客さまにご紹介していました」

「〈Le Yucca’s〉を履くまでは多くの人が経験しているようなファクトリーブランドの革靴を履いていて、そういったブランドの質実剛健な佇まいや存在感がもちろん好きでした。たとえば〈J.M. WESTON〉、〈Paraboot〉、〈Edward Green〉、あるいは〈John Lobb〉とか。これらのブランドの靴を履くときは、堅牢で男性らしくいわゆる紳士靴というオーラをまとった革靴をどうやって柔らかい雰囲気に落として履くかということを念頭に置いたスタイリングを心がけていたと思います。例えばスウェットにリーバイスのビンテージデニムに〈John Lobb〉だったり。だけど僕の中ではこれらのブランドの靴は引き算がしづらいなっていう印象がどうしても拭えなかったんですよね。ジャケットにスラックスで足元を〈Alden〉にしてしまうとアイビールックになりすぎてしまったりとか、イギリスブランドの洋服に〈Edward Green〉を合わせるとブリティッシュテイストが強くなりすぎちゃったりとか。勝手に自分の中で、既出のスタイルにはめこまれていってしまうような、ちょっとした窮屈さを感じていた気がします」

そんなときに知った〈Le Yucca’s〉の靴を履いてみた最初の感想は?

「とにかく自由があること。〈Enzo Bonafe〉という歴史あるイタリアのファクトリーが作っているという点では、既出の革靴たちとなんら変わらないものの、そこに〈Le Yucca’s〉デザイナーである村瀬由香さんという人のデザインが加わるだけで、柔らかさが生まれていて。歴史あるファクトリーが作り出すミリ単位でこだわった緻密なものづくりの技術と、村瀬さんのデザインが化学反応を起こしていました。〈Le Yucca’s〉を履いたことがあったり見たことがある人は感じると思うんですが、やっぱりどこから見ても軽やかなんですよね。ソールの存在感、コバの出し方、ささやかなデザインの一つひとつが軽やかで、でも造りはしっかりしている。そんなバランスのとれたブランドの靴の魅力に、僕自身はどんどんはまっていました。そしてRiverを始めることが決まり、まず揃える靴と言ったら〈Le Yucca’s〉だなと心に決めていたものの、東京のショップには多くの取り扱い店舗があったりして、さまざまな理由からRiverでは取り扱いを断念せざるを得なかったんです」

 

ついに取り扱いが実現した

そんな折に、久しぶりに村瀬さんにお会いする機会が。ふとしたきっかけによってRiverと〈Le Yucca’s〉の距離がぐっと縮まることに。

「Riverからもほど近いセレクトショップで〈Le Yucca’s〉のオーダーイベントがあったのでお店に遊びに行きました。その時、デザイナーの村瀬さんも在店していると聞いていたので、挨拶しに行きたかったんですよね。そこで〈Le Yucca’s〉の別注ブーツのオーダーを悩まれていたお客さんとお話ししていたら、ふとCristaseyaのベルトを探しているという話になって、その時そのセレクトショップにはその方が希望されているサイズがなかったんです。そこで僕は図々しくも、『Riverで取り扱ってますよ!ちょっと取ってきますね!』といって自分の店の商品を紹介したりしてて(笑)後日聞いた話によると、村瀬さんはその時の僕のムーブが面白かったと思ってくれたみたいで、Riverで〈Le Yucca’s〉が取り扱いできるように方々に掛け合ってくれたみたいなんです。そんなことがあって、村瀬さんから直接お電話をもらい、『こういうことだから、ぜひRiverで取り扱わない?』と言ってもらえたときにはすごく嬉しくて。自分が取り扱いたくて、でも断念したブランドが、デザイナーさんが僕自身を見て気に入ってくれて取り扱いできるように自ら動いてくれたなんて知ったらもう、『ぜひお願いします』という返事しかできなかったです」

そんな経緯でようやく取り扱いのスタートした〈Le Yucca’s〉。改めて〈Le Yucca’s〉の靴を見てみるとどんどん新しい魅力に気づかされる。


「村瀬さんご自身が言っていたのは、『靴は足のためにあるものなんだから履きやすいほうがいいに決まっている』ということ。これは本当に〈Le Yucca’s〉の靴が体現しているなと思います。多くのファクトリーブランドの革靴は、スーツに合わせることを前提として考えられたデザインな気がしていて、ソールの作りやコバ、その他飾り、革の素材のセレクトなどどれもが重厚な印象のものが多いです。そして、長く履くために最初の半年や1年は足が痛くなることを当たり前として、まずは靴を自分の足に馴染ませること、を求められますよね。でも〈Le Yucca’s〉の靴は、最初から足に馴染みやすい。履いたその日から、あるいは数日で、もう自分の足はストレスを感じることなく軽快に歩くことができる。そんな革靴って本当に他にはなかなかないと思います。〈Le Yucca’s〉の靴を生産している〈Enzo Bonafe〉の靴も、どちらかといえば他のブランドと比べて軽やかなデザインのものが多いですが、〈Le Yucca’s〉はそこに村瀬さんのデザインが加わってよりどんなスタイリングにも馴染みやすく、そしてファッショナブルに演出してくれる靴に仕上がっていると思っています。華奢なラストのものが多いので、一見すると窮屈そうだなと思う人もいるかと思いますが、一度足を入れてみたらきっと僕の感じていることに共感してもらえると思っています」

 

靴は履きやすいものであるべき

足のことを考えて履きやすさを重要視する〈Le Yucca’s〉を全力で表現できる靴をRiverで提案しようと決心。そんな時思い浮かんだのは白いスリッポンシューズ。

前職のお店で〈Le Yucca’s〉を取り扱っていたときは、ほとんどが黒か茶のベーシックカラーで、その中に独特なカラーリングのネイビーがあったりという色展開でした。どうしても革靴といえばダークトーンが主流だけど、僕のスタイリングで多いデニムの足元に合わせるとどうしても重心がぐっと下がって重たく見えてしまうのがずっとネックだったんです。僕の中では白いスリッポンのスニーカーくらい軽やかなものを合わせたい気分で。だったら〈Le Yucca’s〉でそんな靴を作れたら、きっと黒や茶色の革靴よりも格段に使い勝手のいい靴ができるだろうって思って村瀬さんにご相談しました。

このスリッポンはインラインで展開されているデザインで、製法はマッケイなんですが中底が薄い革でできているためソールが簡単に曲がるんです。これがスニーカーと同じくらいの履きやすさを実現しています。村瀬さん自身も、スニーカーのように履けることを目指して作ったスリッポンだからって話していたもの。そこに、スニーカーのように気兼ねなく履ける白い革を合わせようと考えたら、柔らかい革の方がいんじゃないかとご提案してもらって、今回選んだのがオーストリッチ。オーストリッチの中でも真っ白のものだったりベージュのものもある中で、今回はオーストリッチの表情が一番よく見えるアイボリーを選んでいます。

 

モノトーンの足元に、白い革靴を

木型は最近〈Le Yucca’s〉でもよく作られている《Yeb2》。細く見えますが意外と幅があって、土踏まずのところがグッとえぐれてるような形ですね。履きやすさを重視しながらも足がコンパクトに見える木型。トゥ先も少し丸みがあるけれど他のファクトリーブランドに比べるとすっきりして見えると思います。パンツを合わせて、上からのぞいてみたときの表情もすごくいいです。多くの革靴が、細いパンツと合わせた時には足元だけが異様に大きく見えてしまうようなバランスになると思うのですが、〈Le Yucca’s〉の靴にはその違和感がなく、細いパンツも、あるいは太いパンツからのぞく姿も、しっくり馴染んでくれるのが僕にとって一番好きなポイントかもしれません。

年中デニムを履く僕ですが、今年の春夏は上下ダークトーンのスタイリングや、モノトーンのスタイリングを意識して買い付けをしていて、白、黒、グレーを基盤とした中にネイビーが入ってくる、みたいなカラートーンでRiverのセレクトも構成しているんですけど、そういうモノトーンの装いの時に足元を白で合わせたいんです。村瀬さんは、『Tシャツにショーツでこの白のスリッポン履いたら色気あるんじゃない?肌寒かったらカーディガンきたらいいじゃんね』と言っていて、そんなスタイリングをさらりとこなす大人ってとても格好いいなと思って僕も絶対トライしようと思っています(笑)。ショーツに素足が村瀬さんのおすすめみたいです。あるいは、ショーツにオーバーサイズのシャツで足元にオーストリッチ、なんて格好いいと思います。素足で履くことも想定すると、オーストリッチの革は柔らかくて足馴染みがいいことに加えて今回の木型はコンパクトなこともあって、普段はいている靴よりはハーフサイズあげたサイジングでもいいかもしれません。カーフやコードバンと比べて圧倒的に柔らかいから素足ではいてもストレスがないので、その履き心地をぜひ体感してもらいたいと思います。白い革靴を敬遠される方もいるかもしれませんが、真っ白ではないアイボリーカラーは汚れも目立ちにくいですし、ちょっと汚れがついたらクリーナーで落とせます。普段は栄養クリームを塗る程度のお手入れで問題ないですし、オーストリッチはとにかく利便性が高い革なので安心してこの靴と一緒に謳歌してほしいなと思います。

 

Le Yucca’s

Limited Model《Silp on》

Ostrich

Ivory

39.5,40,40.5,41,41.5,42

Made in Italy

¥244,200 intax

 

※4/26(土)よりRiver店頭発売。またOnline Store販売は、店頭販売終了後、残在庫を4/30(水)12:00より発売とさせていただきます。