2025.4.1
〈NICENESS〉
Limited Model《S.VOGEL》《Z.VOGEL》
春夏のRiverの商品構成はまるでシャツ屋のごとく、偏ったラインナップになるのだが、その中でも特におすすめしたいシャツが〈NICENESS〉より到着。インラインで展開のある《VOGEL(ヴォーゲル)》のデザインをベースとし、生地を置き換えた《S.VOGEL》と《Z.VOGEL》それぞれの魅力を細かく語り尽くす。
一番心に残った生地と、一番心に残ったデザインと
「今シーズンの〈NICENESS〉は柄物のシャツが多い印象で、展示会でもそれらのシャツに目移りしてしまったんですけど、その中にすっと、削ぎ落とされたシンプルな出立ちの《VOGEL》が並んでいて。コットンのブロード生地で仕立てられて製品加工でシワ感とかシャリ感が出ている、ブルーと白のプルオーバーシャツなんですけれど、そのシンプルな意匠がすごく印象に残ったんです」
その《VOGEL》と同じラックに並んでいたのが《KNOX(ノックス)》だ。
「《KNOX》はSuper140‘sウールを使ったドレスシャツで、それも凝った意匠が目立たないシンプルなシャツで、RiverでもMIDNIGHTという深いネイビーの方だけを仕入れることにしました。ロングカフスで結構クラシカルにまとめられたデザインなんだけど、前立てはプラケットフロント仕様でカジュアルさが加えられてたりして、ドレッシーなのにNICENESSらしさが随所に散りばめられていて見ればみるほどすごさを感じるシャツでした。何よりこの生地が素晴らしくて、まるでシルクみたいなさらっとした肌触りと程よいぬめりのある光沢が上品で、ウール特有のチクチクした感じは全くないんです。この生地をオリジナルで作れるNICENESSの凄さを感じました」
どちらのシャツも試着し、《KNOX》を仕入れることを決めながらも、心の中では《VOGEL》のプルオーバーシャツのデザインにも後ろ髪を惹かれていたという。
「とにかく《KNOX》で使われていたSuper140’sウールの素材に感動しながらも、僕自身はずっとプルオーバーシャツが好きだったこともあって、心の片隅では《VOGEL》を気にしていたんです。この《VOGEL》の商品説明を読んでみても、多くの言葉が書かれていなくて、フランスのグランパシャツをリファレンスとしながらNICENESS独自のパターンと解釈で仕上げているというような内容しか書いてないなくて、その、多くを語らないけれど隠された拘りが散りばめられているだろう佇まいがどうしても心に引っかかった。まず前立ての長さとボタン配置のバランスが絶妙で、ネックラインもすごく好みだった。いわゆるスタンドカラーじゃないからこそ、ボタンを開けた時の見え方に少し抜け感があって、ボタンを全部閉めた時も開けた時もベストなバランスになるんです。他にも、チェスト幅と裾のカッティング、カフの形。ディティールを拾い上げたらキリがないけれど、自分が普段あまり気にしてなかった部分にまで細かく突き詰められたバランス感が心地よく全体を構成していることが感じられて。全体として大きいシャツなんだけれど袖ぐりもそこまで広くないからこそもたついて見えない、今の自分の気分にピッタリなデザインだったんです。でもいつものパターンなんだけどこの《VOGEL》を着てみたらなんか自分に似合わないんですよ(笑)だからこれもいつもの流れなんですけど、自分が心惹かれたデザインと、心惹かれた生地とを掛け合わせて別注をお願いしたいと郷さんにお願いしたところ、承諾いただいて今回のシャツも実現しました」
まるでシルクのようなウールシャツ
こうして実現した《S.VOGEL》。Super140’sウール素材をふんだんに用いたこのシャツは、デザインもさることながら素材を存分に味わってもらいたい。そんな思いからXLサイズのみの展開にすることに。
「Super140’sの生地がとろとろでさらっとしているので、プルオーバー型のシャツデザインにこの生地は良い化学変化を起こしてくれるんじゃないかと思いました。ボトムはデニムなのかチノなのかショーツなのか、なんでもいいけれどシンプルにこのシャツを着るだけ、という夏の装いがすぐに頭に浮かびました。あんまりとろとろのウールを使ったプルオーバーシャツって見てこなかったから新鮮に映ると思います。グランパシャツって誰もが一度は着たいなと思う定番のビンテージアイテムかもしれませんが、いかんせんパターンが身体に合わない。サイズ感は小さいものばかりだし、チェスト幅がタイトなわりに裾幅が広がった不思議なパターンになっていたり。生地もコットンやリネンの、どちらかというとほっこりとしてしまうようなものしかないので、着るにはなかなか難易度の高いアイテムのような気がします。そんな理由で自分も憧れはあったけれど結局一度も着なかったアイテムのひとつでした。だからこそ、その憧れのアイテムを着ることができるということにも心躍ってしまうんですよね」
年齢を重ねると、TPOに合わせて洋服を選ばなければならないシーンはいやでも増えていくが、そんなときに上質な素材のシャツが1枚でもあれば、あらゆるオケージョンに対応できるだろうと伊藤は続ける。
「僕自身、今も昔も変わらずに休みの日は気ままにふらっと買い物に出かけたり海に行ったり、自由にすごしてばかりいますが、突然夜に知り合いに誘われて食事に行こうとなった時に行くお店の種類や土地が変わってきた実感があるんです。ちょっとでもいいお店に足を運ぶ時に、カジュアルなTシャツやデニムだと気が引けてしまうし、とはいえジャケットを普段から着るようなキャラでもなくて。そんなときに、季節を問わずにウールのシャツって気持ちよく着ていられるし、見た目にも品が良くきちんとした大人で居られる気がして(笑)特にそのウールが上質であれば、つやっとした光沢感はジャケットスタイルにも引けを取らないくらいにきちんと感を演出できる。それを実感してからというもの、自分のクローゼットにはウールシャツが増えていきました。あとは日本の気候にウールシャツってどうなの?って思う人も多いかと思うんですが、ウール自体は吸湿吸水性に優れていて速乾性もある素材だし、消臭効果も高いからコットンみたいに匂いが残らない。だからアウトドアウェアのインナーとかにはウール素材って当たり前に多いと思うんですけど。着てみてそれが実感できると、夏にもウールシャツって便利なことが分かるはずです。基本的には自分が好きな服しか着ないけれど、その中でも選ぶ質感みたいなものは少しずつ変わっていったのかもなと思っていて、その代表例がウールシャツでした。だからこそ、Riverのお客さまにもその便利さとか、単純に着心地の良さとか、着る季節の長さとかを実感してもらいたいなと思っています」







《S.VOGEL》と《Z.VOGEL》
どちらもあって初めてわかるブランドの真骨頂
もともと《KNOX》で使われていたMIDNIGHTカラーのみの展開で《S.VOGEL》を制作したが、それとともに完全素材別注として《Z.VOGEL》も誕生した。
「このSuper140’sウール素材の良さが一番感じられるのが、同じ素材で展開していたハウンドトゥース柄よりも個人的にはMIDNIGHTだろうと思っていたので、一色だけをお願いすることにしたんです。なによりこの光沢感やドレープ感は単色の方が美しく出るだろうなと。でも前回〈NICENESS〉にお願いしていた《TITO》の生地別注シャツを作っていた時に見せてもらった生地サンプルの中で、どうしても忘れられないすごいいい生地があったんです。それでも作れないかなと思って郷さんに聞いてみたら、もうその生地がなくなってしまったと。その代わりに生地を探してみるよと言ってもらえて、今回提案してもらったのがこのDormeuilのウール100%の生地でした。サマースーツにも使われる素材でしわにもなりにくい。グレーブラウンのような色をベースに鮮やかなブルーがひかれていてこれが素晴らしかったんです。自分のすごく好きな生地で、スペシャル別注が実現してしまいました。こちらが《Z.VOGEL》。
2色展開にしてもらったことで、入荷時に分かったことが伊藤をさらに魅了することになった。
「それぞれの生地はどちらもウール100%だけれど若干特徴差があって、そのどちらにも合うようにディティールが変更されていたんですよね。全く手を抜くことのないプロフェッショナルな仕事に感動しかありませんでした。《S.VOGEL》のほうは《KNOX》と同じ猫目ボタンが使われていました。この生地はすごくとろみがあるのが特徴で、それゆえに生まれるドレープ感が何よりの魅力です。だからそれを壊さないように、前立てやカフの芯地が柔らかい、というか薄い。この生地のための芯地が選ばれています。それに対して《Z.VOGEL》はカフがセリエボタンになっていて、他のボタンも高級ボタンを採用しています。そして《S.VOGEL》に対して使われる芯地よりもしっかりとしたものが使われていました。ジャケットとかスーツに使われるようなものなのかな、そして襟だけは柔らかいものになっていました。それぞれの副資材のチョイスが違うなんて、そんなことまで配慮されるとは思ってなかったからこそ、手にした時の高揚感はひとしおでした。さすがの一言に尽きますね」








「Riverの春夏はシャツ屋なので(笑)カジュアルに着られるシャツはBergfabelのペーパーライクコットン生地のシャツがあったり、CristaseyaとかLea Bobergのような大人っぽいシャツもあるし、もう一つ真夏のシャツには代名詞的なCarlo Rivaのコットン生地の特別なものがこれから入荷予定です。そのどれとも違う、唯一無二のシャツが今回のウールシャツ2型です。スラックスで革靴合わせのすごく綺麗なスタイリングにしてもいいけれど、僕としてはこの超高級生地をどう着崩すかっていうのをこの夏は楽しみたいし、多くの人に楽しんでもらいたいと思っています」
NICENESS
“S.VOGEL”
Midnight
XL
¥70,400 intax
–
“Z.VOGEL”
Grey Check
XL
¥132,000 intax
※4/5(土)よりRiver店頭発売。またOnline Store販売は、店頭販売終了後、残在庫を4/12(土)12:00より発売とさせていただきます。