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2025.2.20

〈lea boberg〉
Limited Model 《CL-Shirt》

 

デンマークのフェン島という小さな島で生まれ、コペンハーゲンのクラフト学校でデザインを学んだ後、2017年にロンドンのロイヤルカレッジオブアートの博士号を取得。その後ケイスリーヘイフォードのテイラリングデザイナー兼パタンナーとして働くlea boberg(リア・ボバーグ)。彼女が休日にこつこつと作りあげ、自身の名を冠した数型のみの小さなコレクションブランド〈lea boberg〉の表現は、決して派手さはないけれど平凡な日常にある美しさに気づかせてくれるもの。そして、そんなありふれた日常をよりよいものへと昇華してくれる力強い美意識が備わっている。

日本で〈lea boberg〉を展開するお店はいくつかあり、全く新しいブランドではないかもしれないが、すっとオーナーの伊藤の心を掴み、折々で出会った人々との巡り合わせもあって今回〈lea boberg〉を展開、そして別注のシャツをリリースすることになった。

〈lea boberg〉との巡り合わせ

「昔ほどブランドの前知識を入れてから洋服を見ることが少なくなったような気がします。どんなブランドなのかをあらかじめ知ってから洋服をジャッジするのではなく、純粋な目で洋服を見て、それが格好いいかどうか、自分が好きかどうかを判断基準にできるようになってきました。〈lea boberg〉もそんな始まり方で、ファーストコレクションから気になってチェックはしていました。近隣の店舗で取り扱っていることももちろん知っていたから実際に洋服を見に行ったこともあるし、パンツを履かせてもらったりして美しいドレープの出るシルエットを体感していました。でも、これがどんなブランドなのか?わざわざ調べることはしていなかったんですよね。Leaという女性がデザインしている服なのだということくらいが、僕が知っていた情報でした」

〈lea boberg〉の存在を片目で常にウォッチし続けながら過ごしていたある日、既知の中だったとある方とパリで会う機会があった。その彼は大手代理店に勤務していたのだが退職し、ちょうど独立して自身の会社を立ち上げるタイミングだったのだそう。そして、取り扱うブランドの一つが、〈lea boberg〉だということを聞いた。

確かな技術に裏打ちされ、
真似できないムードを醸し出す

不思議な巡り合わせに導かれるように、2024AWコレクションからRiverでの取り扱いが叶った〈lea boberg〉。デザインも生産も全てロンドン。すべての衣服は妥協のないクオリティで生産され、リア本人が生産チェックを全ての工程で行っているという。自分の目の届く範囲での生産を続ける〈lea boberg〉は、クラシックだけれどモダンな雰囲気を併せ持つ。

「〈lea boberg〉の服を見て、袖を通してみると、彼女が洋服が大好きなこと、洋服作りが大好きなことが伝わってくるんですよね、そこが何より一番好感を持てるところで。それでいて、ケイスリーヘイフォードみたいな、ちょっと自由度の高いデザイン性を伴ったブランドの服をきちんとしたパターンで仕上げられる確かな実力もある。シンプルな服こそカッティングが大事だと思うけれど、〈lea boberg〉というブランドでそれをこなせている凄さは、やはり彼女の鍛錬の賜物なんだと思います。生地の良さを活かすようなカッティング、ドレープの生み出し方の素晴らしさを、僕は初めてリアの作ったパンツを履いたときに感じました。そんな彼女の作るコレクションは型数が少ないんだけれど、それもいいことであるように僕は感じます。パタンナーの世界ってミリ単位で突き詰めていく作業の連続でしかないと思うし、それにしっかり向き合っているからこそ、1型1型へのこだわりがあるからこそのこの服のクオリティなんだということが、袖を通してみるとしっかり感じられます」

〈lea boberg〉の魅力は生地の良さを活かすような確かなカッティング技術と、シンプルだけれどムードのあるデザインに仕上げるバランス感覚だと伊藤は続ける。

「僕が感じるいい服って、デザイン、シルエット、それに見合ったいい生地が三位一体になってバランスをとれているものだと思っていて。デザインだけ凝っていてもだめだし、いくらいい生地を使っていても形が良くなければ意味がない。その点、〈lea boberg〉はそのバランスがすごく取れていると思います。日本のブランドはそのバランスの取り方が長けているブランドがすごく多いとも思うのですが、そんな日本のブランドには出せない“ムード”があるのもリアの作る服の魅力ですね。ムードの出し方ってきっとデザインのちょっとしたこだわりだったり、シルエットの出し方なのかなとも思うけれど、〈lea boberg〉はクラシックでオーセンティックな服作りのルールを理解しながらあえてそこから逸脱している女性ならではの自由さといったらいいのか、その余白みたいなものがムードにつながっているような気がします。デザインは決して新しいだけではなくて、きちんとオーセンティックであるけれど、それを今っぽいパターンで新鮮さを出してまとめ上げることができている。それをきっと計算しているというよりは、彼女は直感で仕上げているような気もして、それこそがセンスなのだなと思わされます」

彼女の通ったブランドへの敬意を込めた
モノトーンのカラーパレットと別注シャツ

「あと、彼女とは世代が近いこともあって、通ってきたブランドが似ていて、そこにも親近感を覚えるんです。80〜90年代の〈Yoji Yamamoto〉と〈Giorgio Armani〉とか男性的なスーツを少し着崩してソフトにこなす感覚とかがすごくいいなと思います」

〈Yoji Yamamoto〉や〈Giorgio Armani〉からインスピレーションを得ているという話を聞いた後では理解しやすく、〈lea boberg〉の服のカラーパレットはモノトーンがベースになっている。必ずしもモノトーンだけではない、リア自身がチョイスしたさまざまな生地の中から好みのものをチョイスしてオーダーできるそうなのだが、彼女の受けた影響をしっかりとRiverも受け継ぎ、セレクトしているインラインはモノトーンをベースに仕入れをすることにした。

「25SSの仕入れを組み立てるタイミングで僕の脳裏にあったのは黒いシャツ。ウールシャツを春夏に着たいと思っていて、夏にも快適に着用できるデザインのリアの服はもってこいだったので、ウール100%の生地でインラインの《CL-Shirt》という定番デザインのノーカラーシャツをオーダーしています。この《CL-Shirt》は、程よくボリュームがあるシルエットなんだけど、ただ大きくしているデザインじゃなくて、ちょっと短めに設定された着丈や深めのアームホール、広いチェスト幅などがやりすぎ感がなく設計されているんです。広く取られた身幅からか背中のバックショットに美しいドレープが生まれるようにもなっていて、〈lea boberg〉らしさがしっかり備わっています。あと、リアの作るシャツは袖にカフスがなくて、アームホールからそのままの流れで大きくふわっと落ちる形になっているのも特徴です。コンバーチボタンが袖先についていて、それを留めることで袖が絞られる設計。だから普通のシャツとは全くシルエットが違うんです」

そんな唯一無二のシャツである《CL-Shirt》を、River別注をオーダーすることに。選んだ生地はモノトーンのカラーパレットに準じながらも、いい意味で〈lea boberg〉らしくないコットンのブロックチェック。

「他にも提案されたストライプ柄やちょっとカラフルな生地を見て、リアっぽくないシャツをあえて作ってもらいたいなという気持ちが湧き上がって。その中でも、自分がチェックシャツが好きということもあるけれど、やっぱり黒を主体に仕入をしているからモノトーンからは逸脱しないようにしたいなと思って、黒白のブロックチェック柄でオーダーすることにしました。ブランドのイメージにはないカジュアルさと柔らかさが加わっているし、他のお店ではまず展開されるようなものではない仕上がりになるだろうというイメージが湧きました。正直、まだ僕はリアのシャツを持っていないからすごい楽しみにしていたんです」

インラインと別注ともに《CL-Shirt》はメンズのMとLサイズ相当であるサイズ3と4をオーダー。着丈がちょっと短いけれど、アームの太さとかチェストのボリュームがあるこのシャツのシルエットは、実はRiverで仕入れをしているボリュームのあるパンツたちと相性が一番いいはず。

「チャコールグレーのワイドスラックスとか、ブラックのとろみのある生地のスラックスとか。夏はそれにサンダルだったり、あるいはショーツの合わせでもいいかなと思っています。あとはRiverの提案だったら太いデニムにチェックシャツのシンプルなスタイリングも」

そんな妄想を繰り広げている中ロンドンから届いた別注シャツ。開けてみたら思わぬ展開に。

「わくわくしてシャツを手に取ったら、オーダーしていた4のサイズがなくって3のみだったんです。とにかく大きめで着たい伊藤の病的な感覚からしたらサイズ4を狙っていたので結構ショックは大きかった(笑)でも、もともと〈lea boberg〉を取り扱えるようになったときも巡り合わせだったことを思い返すと、今回のシャツもリア自身が『サイズは3くらいがいいぞ』って言っているのか、そういう巡り合わせだったのかもって気もして、そのまま受け入れようと思いました。サイズ3だと日本ブランドのLくらいの感覚で、僕は普通に大きいくらいで着られるサイズだから、このシャツをインナーに着て上からカーディガンを羽織るとかニットを着るとか、それこそリアのジャケットを着るとか(仕入れてないけど)もできるから汎用性で考えたら文句のつけようのないサイズなんです。今春にはコットンのシンプルなコートの中に、Cristaseyaで大きなチェック柄のコートを仕入れているからその中に着ても面白そう。まだ先だけれど秋口にはこのシャツの上にVネックのニットを着たり、オーセンティックなカシミヤのカーディガンを着て、ちょっとアメリカンなベージュのチノとか合わせたいかも、ってこのサイズゆえの新しい妄想が膨らんでいます」

巡り巡ってやってきたこのシャツはきっと、巡り合わせるべきなお客さまのもとへと確実に旅立っていくのだろう。そんな洋服のものがたりに思いを馳せられるシャツに仕上がった。

 

〈lea boberg〉

Limited Model 《CL-Shirt》

Cotton 100%

3

Size:3 → 肩幅59,身幅70,袖丈64,着丈76cm

Gingham Check

¥121,000 intax

店頭発売は2月15日(土)より、Online Storeでは2月18日(火)12:00より発売。