2024.8.22
NICENESS
「Limited Model“MCLAGAN”」
「Limited Model “M.TITO”」
この秋冬は特にNICENESSとの別注アイテムが多いRiver。なんでそんなに別注ばっかりやるんですか?純粋な疑問をRiverオーナー伊藤にぶつけてみる。返ってきた答えはNICENESS愛と自己満足に溢れたものだった。
知る人ぞ知る名品“MCLAGAN”が今年も帰ってきた!
去年初めてNICENESSからリリースされた究極のPコート“MCLAGAN”。フランス、オランダ、アメリカ、日本など様々な国のデザインをリファレンスとしながら、NICENESSらしい独自のデザインに昇華している名品。
「そもそもここ最近、ずっとPコートが欲しくて、メゾンブランドから古着まで探し回っていた自分がついに似合うPコートが探せなかったんですよね。僕自身にPコートが似合わないんだなあ、と諦めていた矢先に去年突如展示会で見つけたのがこの“MCLAGAN”でした。クラシックなのに、いわゆる古着屋さんにあるようなアメリカのPコートとか、20代のときにすごい流行って着てたようなPコートとかの、誰もがイメージするようなPコートのあり方を覆してくれる、素晴らしい仕上がりなんです」
昨年、Riverでも仕入れをした“MCLAGAN”。まさに非の打ちどころがない名品なのだと熱弁が続く。
「平易な言葉だけど、これは〈最強・最高・Pコート〉。Pコートらしい重さはしっかりあるんだけど、スーパー120sの糸を高密度に織り上げてるからこその素材の光沢とか品の良さがあって。ウール100%のメルトンってごわごわしてたり、着にくいとか、育てていかないといけないイメージがあったんだけど、これを羽織ってみたときに思ったのは、とにかく柔らかいこと。しっかりしていてちゃんと暖かさがあるけどその柔らかさがあるから、ずっと着られるし、これさえ一着持っていたら真冬まで過ごせるなって。もちろんシルエットバランスも良くできていて、着てしまえば様になる」
そんな思いをこのコートに感じた人は決して少なくなかったようで、Riverでの仕入れ分にも多くの問い合わせがあり、昨年はすぐに完売してしまったそう。
「ついに出会ったPコートだったのに、自分が買おうと思う暇なくどんどん旅立っていってしまったんです。結局去年買えなくて。不完全燃焼だったその気持ちを抱えたまま、24AWのNICENESSの展示会に足を運びました。なんなら、あのコート復刻してもらいたいなあなんて邪な考えもちらつかせながら。そしたらまたラックに並ぶ“MCLAGAN”が。『やった、今回もあるぞ。次こそ自分も買える!ありがとう!』って完全にパーソナルショッピングモードになって試着しました」
“MCLAGAN”はスーパー120sを使用した高密度なウールメルトン生地をベースに、ウォームポケットのパイピングや襟裏にレザーを配したデザイン。去年はネイビーのウールメルトンにブラックのレザーを合わせたモデルだったが、今年は?
「今年の“MCLAGAN”はブラックのウールメルトンと、そのウールメルトンをインディゴで染めたブルーの2色展開になっていました。どちらも同色のレザーをあしらっていて。どっちも試着したけれどとにかくブラックが格好良くて。ブラックのPコートって、クラシカルな中にエレガンスやモダンさが加わった印象になるなあって。とにかく格好いい、ってテンション上がっていたのに、何度見てもなんだか鏡の中の自分に何となくしっくりきていなかった。これが現実だった…。じゃあインディゴが正解?ともう一度袖を通す、やっぱどっちもいいなあ、同じくらいいいなあ、でもブラックが欲しい。でもなんだか似合ってない?みたいな状況でした」
ひとり逡巡する中、決めきれない気持ちと、自分に本当にしっくりくるコートを手に入れたい思いから、近くにいた郷さんにお願いをしてみたのだそう。
「このPコートは完全に完成されていて、手を加える余地なんてどこにもないんだけど、そのとき本当に思いつきで、『襟裏とパイピングのレザーをブラックからインディゴにできますか?』って郷さんに聞いてみたんです。そしたら、『できるかも』って。」
図らずも、昨年の“MCLAGAN”がネイビーボディーにブラックレザーだったのが、その逆になったのが今回のRiver別注として誕生した。
「真っ黒のアウターってやっぱりどう転んでもモダンじゃないですか。エレガント。でも僕にはちょっとエレガントすぎた。そこにネイビーが入ることでちょっとした大人の隙みたいなのが生まれるんじゃないかなって思っています。サイズはMとLの2サイズで作ってもらってるんだけど、個人的にはサイズも悩んでて。僕は165cmだから普通に着るならMなんだけど、Lをちょっと大きく、ぶかっと着ても格好いい。だから、小柄な方とか、女性とかがMを大きめに着るのもいいなって思っているから、一度袖を通してもらいたいです。」
完璧なコートにちょっとだけ生まれた隙。その隙の作り方は確かにサイズバランスでも作れるかもしれない。完璧を突き詰めるブランドの姿勢に反するのかもしれないが、そんな着る人の自由すら受け入れてくれるのが完璧がゆえの懐深さなのかもしれない。
「たとえば海外ブランドのコートで、ボディーの色とレザーの組み合わせをあえてバイカラーにしてるブランドってあるけど、そのさりげないあしらいにセンスいいなって思うことってあるじゃないですか。その感覚の良さを感じたりとか、ブラックのモダンさに抵抗があって、ちょっと隙があるといいなって思ったりとか、そういう感覚を共有できるような人に届けばいいなと思っています」
エゴから生まれた“TITO”別注はさらなるエゴを生んだ
ブランドへのリスペクトを持ちながらも、自分に似合うように、自分が一番着たいアイテムになるように、長く愛せるように。そんな思いでこの春夏に別注した“TITO”。紆余曲折あって、完全エクスクルーシブも誕生してしまった。その経緯はこちらより。
「僕が初めて買った“TITO”は23AWのコットンリネンのLサイズ。とにかくそれが好きだったから、24SSで特別仕様の“TITO”をお願いしたんです。何着も持ってるけれど、結果的にはやっぱりLサイズよりXLサイズが自分は好きだった。NICENESSの緻密なサイズバランス、パターン、ピッコロの手縫い、カルロリーバの素材感、全てがマッチしている素晴らしいシャツの、その凄みはやっぱり贅沢な分量感でより一層生きてくるんじゃないかと実感した。だから、もっと手元にXLサイズの“TITO”がほしいなって、欲が増してしまって…。」
XLのサイズをもうちょっと欲しいですとNICENESSチームに連絡。そこで更なるエゴが生まれてしまった。
「“TITO”のシルエット、デザインは本当に完成されてて、自分が持ってるどのブランドのシャツよりも一番着ていると断言できるくらい好きなんです。ただ、薄いコットンのふんわりした上質なCARLO RIVA(カルロリーバ)の生地じゃなくて、なめらかで光沢があるウール生地で作ったら、このシャツどうなっちゃうんだろう、っていう好奇心が生まれてしまいました。もう一回XLサイズがお願いできるんだとしたら、そんなパターンも見てみたい。だからもうダメ元で、ウールで作れませんか?ってついでに聞いてしまいました。そしたら、いくつか素材を提案してもらえた」
何度か郷さんとラリーをする中で提案されたのが、LORO PIANA(ロロピアーナ)やDORMEUIL(ドーメル)の光沢のあるスーツ地のようなウールチェックの素材だった。
「色とかどうしましょうかって話になったときに、できたらネイビーとかダークトーンがいいなという話はさせてもらいました。これまで“TITO”は彩度のある色展開が多かった印象で、ダークトーンってなかったんじゃないかな。だからっていうのもあるし、イメージとしては、真夏は無理だけど晩夏の夜にさらっと羽織れたりとかする薄手のウール生地っていうのがあったので、夏にシックなネイビーとかいいんじゃないかなって。もちろんそのまま冬まで着られる。そんなやりとりを経て、手渡された生地スワッチにあったのが、DORMEUIL(ドーメル)ダークグリーンのウール生地と、LORO PIANA(ロロピアーナ)のネイビーのウールチェックでした。その小さな布の状態でも光沢があって綺麗だったから、きっと“TITO”の分量感になったときにはぬるっとした光沢感は増すだろうし、すごいきれいなドレープが生まれるんじゃないかとわくわくしました。既存のものとは全く違う表情になりそう。今回はなのでXLサイズのみ、お願いしました。その代わり、裄丈はLサイズの仕様にしてもらっています」
もうひとつ、NICENESSチームから提案があったのは生産背景のことだったそう。
「あと、この生地だったら手縫いでふっくらとさせたり歪さをもたせた立体感を取り入れるよりは、きれいな運針で、しっかりミシン縫いで仕上げたほうがいいんじゃないかと提案してもらいました。僕も生地を見ていたときに同じようなことを感じて。“TITO”の良さって、究極の生地をSalvatore Piccolo(サルバトーレピッコロ)が作る、その手が入った立体感にあるとは思うのだけど、この生地だったらあえて作りを変えてもいいのではないだろうかと、納得して、その生産方法でお願いしました。ウール生地の高級感だとか、あとたとえば18金のファインジュエリーみたいな、均整の取れた美しさの方を目指した“TITO”を自分が見てみたかった。ただ、このウール生地を納得するクオリティで仕上げてくれる工場はなかなかないみたいで、思っていたよりは納品が遅くなってしまって、まだ手元にありません。本当はコートと一緒にお客さまにも見てもらいたかったんですけどね」
わがままの手前にあるもの、わがままの先にあるもの
そんなこんなで今シーズンは別注アイテムが多い River。自身が好きなアイテムを、より自分自身に似合うためにちょっとした手を加えているというのは、わがまま放題やっているようにも見える。でもその手前にあるのが、ブランドへの熱狂と、作り手への敬意なのだそう。
「自分の中でのNICENESSの究極アイテム“MCLAGAN”と“TITO”を、より自分用に作ってもらったっていうのが今回。もちろんブランドとしては、『これが100点だ』と思ってリリースしているアイテムだというのは充分にわかっていて、そこに生地を変えたいとかデザインをいじったり色を変えたい、と要求するのはナンセンスなんだろうなっていうのも感じています。ものづくりを担っている人たちはすごいいろんなことを考えた上で商品にしているから。でも、それをひっくるめても、僕はほんとうに服が似合わないから(笑)自分が洋服が欲しいってなったときに『ここがこうなったら自分でも着れる』って思うことが多くて。じゃないと似合わないものがありすぎるから。でもそのアイテムが好きだからこそ、自分が欲しいからこそ、自分が似合うように作ってもらえたらって思って。わがまま言って作ってもらってます」
わがままを通すからこそ、本当に心から愛せるアイテムになる。だからこそ、いつまでも愛着を持って着続けられる。NICENESSの、特に“TITO”の話を聞いていると、一個人の、一アイテムに対する類稀なる愛を感じることができる。わがままを通した先にしか見えない景色もきっとあるのだろう。その熱狂に参加してみたら、その誰かと一緒になって、ひとつのアイテムを愛を持って着続けられるのだろうと思う。
別注“MCLAGAN”は8月24日(土)に発売。別注“M.TITO”詳細はまた改めて。
「NICENESS」
-“Limited Model” MCLAGAN-
Wool 100%
M,L
BLACK × ID
¥198,000intax
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-“Limited Model” M.TITO-
Wool 100%
XL
※M.TITOの入荷時期は未定。
Text : Yukina Moriya(@yukina.moriya)